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備前・旭川の憂鬱 (コロナ禍で顕在化した「JRローカル赤字線廃線」問題 24-08) [日記・雑感]


コロナ禍は2019年末ごろから始まり、現在も終息することなく継続していると思われます。

このコロナ禍で顕在化した〝現代の日本社会の弱点〟が色々ありました。例えば日本の医療システム、病床数は世界一と言っていましたが、現実には病床が不足し大混乱となりました。

感染防止対策として〝在宅勤務:リモートワーク〟が一般化され〝通勤・出張・観光〟が抑制されました。これに伴い、交通機関の利用者が減少し航空業界、鉄道業界、観光業界の収益を大きく棄損し、その結果「大赤字」となりました。

この「大赤字」が従来から議論されていた「JRローカル赤字線廃止」に火を付けました。

その先兵を切ったのが筆者の居住している岡山県と広島県を跨ぐ「JR芸備線」の存廃の議論です。ほとんどの方はこの「JR芸備線」がどこを走っているのかご存じないと思いますので、JR西日本の公表資料を借用し、場所をご説明します。

real map - 409.jpg

「JR芸備線」は中国山地の真ん中の「新見市:にいみし、赤丸」と「広島市」を結ぶ非電化・単線のローカル線です。中間に「三次市」があります。この三好市は岸田総理夫人の出身地だそうです(どうでもいいお話ですが)。


この問題はJNR日本国有鉄道時代から議論されていますが、経済問題が極端に政治問題化「存続一択」となりました。役所関係も、議員の方々は選挙対策もあり手を付けられない状況でした。

しかしながらJR側の強い要求があったのでしょう、国土交通省は「地域公共交通の活性化及び再生の促進に関する基本方針」https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000330.html を公表、施行は令和5年10月 01日と決まりました。法律の背景は〝地域の関係者の連携・協働(共創)を通じ、利便性・持続可能性・生産性の高い地域公共交通への「リ・デザイン」(再構築)を進めるため〟と記載されています。

この法律に基づきJR西日本は早速、地域公共交通活性化再生法に基づく再構築協議会の要請について 2023/10/03 https://www.westjr.co.jp/press/article/items/231003_00_press_saikouchiku.pdf を国交省に要請しています。

その具体的な区間は前述の地図で示したJR芸備線「備中神代‐備後庄原」間68.5㎞です。新聞の見出しとして「第1号・芸備線が試金石 再構築協議会、活用様子見も―JR各社」とあります。

ここの管轄はJR西日本・岡山支社でして、先日岡山支社長殿は、岡山・福山地区に新型車を導入する(前述の地図の〝桃色〟の路線)と発表と同時に、このJR芸備線に対する再構築協議会の要請、つまり「廃線したい」を発表しています。

では岡山支社関係路線の「平均通過人員」を見てみましょう。このデーターはJR西日本公表のPDFより抜粋しました。

平均通過人員2022.png

この下側の〝赤字〟の部分に注目下さい。「備中神代‐備後庄原」間は、現在は日本で最も悪い成績の路線でして、一日に100人以下の通過人員です。他の線区と比較しても極端に低い数値です。

実はあえてこの表に掲載しませんでしたが、中国山地を横断するローカル線があります。それは「姫新線」です。区間は文字通り、姫路‐新見です。この区間もローカル赤字線ですが、それでも平均通過人員は「中国勝山‐新見」間100人台を除き、1,000人台に近い数値です。

JR西日本も、当然とはいえ、上表の平均通過人員の多い路線から順次「新型車両」を投入しています。


ところがローカル線に対して興味深い言説を2つ見つけました。一つは里山資本主義の藻谷浩介さん(59)です。
『芸備線 地域の活力維持に必要』 庄原で日本総研・藻谷さん講演から。 https://www.sanyonews.jp/article/1504977?rct=syuyo 
岡山、広島両県を結ぶJR芸備線の利用低迷区間が存廃に揺れる中、鉄道を生かしたまちづくりについて考える勉強会が19日、沿線の庄原市内で開かれた。日本総合研究所(東京)主席研究員の藻谷浩介さんが講演し、地域の活力維持には芸備線が必要と訴えた。藻谷さんは「鉄道は先人たちが残してきた財産であり、赤字だから廃止にする考えはおかしい」と強調、されたそうです。

筆者は単純に〝無責任な発言だな〟と感じました。もう一つは、『東洋経済オンライン』2022/10/01 https://toyokeizai.net/articles/-/622606 です。

〝JR只見線:2011年の東日本大震災で被災した区間の復旧工事「11年ぶり」復活、地元住民たちの執念、利用者少なくても観光による「経済効果」大きい〟と赤字ローカル線廃線と「真逆」をやっています。只見線の被災区間の2010年の〝輸送密度:平均通過人員は49人〟であったそうです。

そして〝「復旧費用の約90億円」は国、福島県と会地方17市町村、JR東日本で3分の1ずつを負担。また、同区間は福島県が鉄道施設を保有する上下分離方式が取られた〟そうです。さらに〝復旧後に年間約3億円かかる運行経費も福島県と会津17市町村が負担する〟とか。

「上下分離方式」とか「公設民営方式」と呼ばれる方法なんですが、これでは「日本(国有)県営鉄道」でして〝年間約3億円かかる運行経費も福島県と会津17市町村が負担する〟なんて経済原則を著しく逸脱しています。数年後、必ず問題となるでしょう。


「ローカル赤字線」の問題は、その土地の住民の方々にとって死活問題のはずなんですが、現在どうされているのか!?それは各ご家庭に自動車を一人一台お持ちで、ある程度解決していると思われます。最近は鉄道と並行して道路が整備されています。厳しい言い方をお許しいただけるのであれば、住民の方々が自発的に不便なローカル線を放棄したことになります。

JR芸備線に関しましては、JR西日本が『関係自治体への説明資料』2023/05/10 https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/345373.pdf で丁寧に説明をされていますが、住民の方々は納得されないでしょう。

それはこの資料が「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される、意地を通せば窮屈だ、兎角に人の世は住みにくい」 <夏目漱石の「草枕」>の典型だからです。


筆者は思います。住民の方々が本当に欲しい乗り物は何か?いまある鉄道が無くなるのはプライドが許さない、といった鉄道文化ノスタルジアを含め【本音】で語る必要があります。

「通学」「通院」が最大の課題と考えるのであれば、BRTバス・ラピッド・トランジット:Bus Rapid Transitとか、DMVデュアル・モード・ビークル:Dual Mode Vehicle が考えられますが、前者のBRTの方が有力の様に思います。

気仙沼線BRT、大船渡線BRT、日田彦山線BRT、等先例がありますので、地元の皆さんは検討されると良いと思います。バス運転手さんが不足しているから〝検討の余地なし〟と云わないで頂きたい。

そして間違っても「JR只見線」の轍を踏まないようにお願いしたいものです。



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