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備前・旭川の憂鬱 ( 気候復元 中川毅著『人類と気候の10万年史』より 23-01) [日記・雑感]


地球の気候変動に関する論調は、相も変わらず、余りにも直情径行で感情的です。

一度、今までの地球温暖化を離れ〝真の気候変動とは〟を問うてみたいと思いました。学会の論文を探すことが研究者には必須ですが、筆者のような素人には、それは実力的に無理です。

そこで今、筆者が知りたいと思う「本」を探しました。

ありました!筆者にとって余りにも適切な著作が見つかりました。それは、中川毅著『人類と気候の10万年史』過去に何が起きたのか、これから何が起きるのか、ブルーバックスB-2004 2017年です。


この本は、気候変動を理論ではなく「実証」で論じたものです。その実証の根拠は、ちょっと意外なんですが、日本に存在します。福井県若狭湾岸にある「水月湖」という三方五湖の一つの湖で、過去の気候を記録した良質の〝年縞堆積物〟の存在が確認されたことに始まります。

国際的な学会でも水月湖は今や「世界標準時計」として「グリーンランド氷床」と同様の扱いを受けている貴重な地球の気候の記録です。

この地球の気候記録である〝年縞堆積物〟と、理論である「ミランコヴィッチ理論」がよく一致しているようです。

「ミランコヴィッチ」とは何だ?ですが、ミルティン・ミランコビッチ、セルビアの地球物理学者1879 – 1958 です。彼は祖国セルビアで発行されている2,000ディナール紙幣に肖像が使用されているそうです。

彼の功績は、地球規模の気候変動が「ミランコヴィッチ・サイクル」という「3つの周期」で説明したことでした。

<一つ目> 100k年サイクル:地球が太陽をまわる公転軌道から来る。
公転軌道 - 409.jpg

<二つ目> 41k年サイクル:地軸の傾きから来る。
地軸の傾き - 409.jpg
およそ1,000k年前よりも古い時代に、氷期が到来するタイミングを決めていた。その後、何らかの理由で氷期の間隔は100k年に延びた。

<三つ目> 23k年サイクル:地軸のみそすり運動、歳差運動から来る。
歳差運動 - 409.jpg

これらの運動により、地球は太陽からのエネルギー授受が増減し〝気候変動〟となる、という理論です。

太陽の放射エネルギーは地球へ平均 341 w/m2 降り注いでいます。地球への影響は、31%が反射、20%が吸収、49%が透過、していますが、いずれにせよ「ミランコヴィッチ理論」は太陽の放射エネルギーが、地球の惑星活動で地球の気候にどのように影響しているかを明らかにしました。

「ミランコヴィッチ理論」は複雑に見える地球の気候変動を、単純なサイクルに還元して理解できることであります。

中川毅氏は上記著作『人類と気候の10万年史』p156-157で極めてコンパクトに地球の15万年の気候の歴史をまとめています。この研究結果は最近のコンピューターシミュレーションと異なり〝気候変動を理論ではなく「実証」で論じたもの〟ですから、信憑性は高いと考えます。

水月湖 - 768.jpg


実際のデーター(筆者注:「水月湖」の年縞堆積物からの気候復元)を見ると、メタンガスは〝5,000年前〟二酸化炭素は〝8,000年前〟頃から、「ミランコヴィッチ理論」で予想される傾向・サイクルを大きく外れて増加しています。

アノマリー - 409.jpg

この原因をアジアにおける水田耕作の普及、およびヨーロッパ人における大規模な森林破壊にあると主張する学者もいて学会に衝撃を与えたらしい。

これらの人間の活動が有機物の発酵を促し、大量のメタンを放出、森林伐採は生態系の光合成速度を低下させたことで、大気中の二酸化炭素を増加させた。もしも、これらの人間の活動がなければ地球はすでに次の氷期に突入しているはずだ、と。(以上160pより引用)


このグラフでは現在の二酸化炭素濃度が〝280ppm〟と示されています。最近の報道では〝400ppm〟に上昇したと報じられています。この測定値はあくまでも「水月湖」の年縞堆積物からの気候復元ですから矛盾しません。

以上が筆者が理解した、中川毅著『人類と気候の10万年史』の主張の骨子です。


その他、本を読んでいる時に気づいた特筆すべき〝気候変動〟を取り上げてみます。

❖ 現在は地質学用語で〝間氷期〟すなわち寒冷な氷期と氷期の間にある。温暖で暮らしやすい今の気候は、次の氷期が来る一時的な状態に過ぎない。しかし8,000年前頃からアノマリーとなっている。

❖ グリーンランドの氷床から判ったこと〝11.2k年前〟全世界で氷期は突然に終了した。
この時の温暖化振幅は〝5-7℃〟であった。

❖ 14.7k年前、大規模な温暖化があった。これは氷期の途中で起きた。一時的な温暖化で「ダンスガード=オシュガー イベント」の最後のイベントに当たる。

D-Oイベント - 409.jpg

水位が350年ほどの間に〝20m以上〟も上昇した。

その他、示唆に富む〝目から鱗〟が多数語られています。忙しい世の中、少し時間を作って、風説に惑わされないように、このような「本」を読んでみては如何でしょうか!?



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