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備前・旭川の憂鬱 ( 日本のCOP「化石賞:fossil award」受賞は世界を救う! 23-02) [日記・雑感]


「化石賞」とは、COP※が地球温暖化や気候変動対策に対して後ろ向きな行動や発言をした国に、皮肉を込めて贈られる賞でして〝化石燃料に因んでいたり、化石みたいに古い考え方をそのまま続けている国〟という意味が込められています。
※COPとはUN Climate Change conference:国連気候変動枠組条約締約国会議の略称です。

日本には〝不易流行〟という格言がありまして、何でもかんでも新しいものに飛びつくような軽薄な国ではありません。でも日本にも「出羽守」や「尾張守」がいまして、日本国の置かれた環境や歴史を否定し、欧米は優れているとケツの軽い方も散見されます。しかし、日本人の主流、メインストリームの考え方になりません。

例外として東日本大震災、福島原発事故後の〝原発忌避〟はありましたが、さすがに10年経過し、日本人はその異常さに気が付きました。反原発の活動家や環境テロリストの言動に従うと、電力不足やエネルギー費の高騰を招く、と現実が証明してくれました。


経産省は2020/07、非効率な石炭火力を2030年度までに段階的に縮小する方針を表明しました。2022/06末時点の国内の石炭火力は150基で、その内、非効率設備は120基現存するようです。

しかし高効率とされる最新の石炭火力は維持、拡大を容認しているうえ、輸出も引き続き行う方針です。こうした立場がどこまで国際社会、特に欧州の理解を得られるかは分かりません。

ただ、世界を見渡せば、石炭火力を使っている国は少なくありません。日本以外にもチャイナ、インド、韓国、米国、ロシア、豪州、南アフリカ、ポーランド、ドイツなどが石炭大国と云えます。このほか東南アジア諸国も利用が多いのです。

「出羽守」の大好きなドイツ、彼らは褐炭:リグナイト、brown coal を露天掘りしていまして、その特性上露天掘りの直近に火力発電所を置いています。褐炭の特性は水分量が多く、重くてかさばり輸送コストがかかるわりにはエネルギーをあまり生産できず、燃料としてのエネルギー効率は悪いのです。また、空気中の酸素と化学変化して自然発火する恐れがあります。それでも今回のウクライナ侵攻による天然ガス供給停止対策では活躍しています。

日本が批判されるのは、欧州を中心とする各国が石炭火力から距離を置く中、日本が石炭火力を推進し、発展途上国での建設にも多額の公的融資を続けているからです。例えば国際協力銀行JBICは昨年4月、ベトナムでの石炭火力発電事業に約12億ドル、約1,300億円を限度とする融資を行うことを決めています。


改めて議論するまでもなく、エネルギーは安定的な供給、経済性、環境適合、安全性などのさまざまな要素を満たすことが求められます。日本は自給自足が可能なエネルギーがほとんどなく「エネルギー安全保障」を真に考えなければなりません。

しかし残念ながら、全てで完璧なエネルギーはなく、バランスをとりながら最適なエネルギーと、その組み合わせ:ポートフォリオを選ぶことが重要です。欧州と日本では地政学的リスクが異なりますし、歴史や環境も異なります。なんでもかんでも欧米に基準を合わせる必要はありません。

日本で使われる石炭の調達先は豪州やインドネシア、ロシア、カナダ、米国などでして、原油の大半を依存する中東、さらに言えばロシアに比べて紛争などがもたらす地政学的リスクが少ないという利点もあるのです。


実は日本は火力発電技術では世界最先端を行っています。40年前の発電効率の平均は32%でしたが、最近は40%を超えています。少し見難いグラフをご覧下さい。

発電効率トレンド - 409.jpg
大地昭生『火力発電の変遷』J.IEE Japan Vol.121 No.4 より引用

日本国内でごく最近発電開始した石炭火力発電所の例を見てみましょう。

2022/11/01 中国電力のプレスリリースより。〝三隅発電所2号機の運転開始〟出力:100万kW(原発1基分)、発電効率がなんと〝43.3%〟です。燃料は石炭・木質バイオマス(混焼比率は10%程度)です。もちろん大気汚染物質除去装置を持っていまして、煙害はありません。年間50万トン程度の二酸化炭素(CO2)が削減できます。

もう一つ、2023/1/13 JERA姉崎火力新1号機が運転開始です。JERAは東京電力と中部電力は出資する原発を除く発電に特化した会社です。出力は65万kW、発電効率は分かりません。燃料はLNGです。大気汚染物質除去装置を持っていまして、当然煙害はありません。年間60万トン程度の二酸化炭素(CO2)が削減できます。

この発電所は50Hz地域の電力不足解消に大きく寄与します。電力供給の余力を示す予備率に換算すると東京電力管内のおよそ1%に相当するそうです。


ですから今後もCOPより「化石賞」をありがたく頂戴する度に、日本は世界の二酸化炭素(CO2)の削減に寄与できた、と世界に大いに公言すべきです。



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