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備前・旭川の憂鬱 (「報道の自由」ランキング再考 18-49) [日記・雑感]


以前より「報道の自由」ランキングには違和感を禁じ得ませんでした。最近でも拙blog「世界で最も腐敗が少ない国ベスト20」〝http://ironbridge-uk.blog.so-net.ne.jp/2018-03-01〟にup-loadしました。

「世論 (せろん)」は英語では〝popular sentiment〟「輿論 (よろん)」は〝public opinion〟と説明された佐藤卓己さん(京都大学大学院教育学研究科教授) が〝Newsweek 日本版 2018年2月22日〟に投稿された論考は、筆者に対して〝説得力〟がありましたので抜粋して紹介します。

この言説の元ネタは、論壇誌「アステイオン 」85号(公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会編、CCCメディアハウス、2017年11月29日発行)だそうです。


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世界報道自由ランキングの順位は61位(2015年度)、72位(2016年度)と順位を年々下げている。果たして安倍政権のメディアに対する姿勢に原因があるのか、それとも内閣支持率で空気を読むメディアの自己規制に問題があるのか――。「この順位に驚かない」から論考ははじまります。

2016年8月21日、「伝説のジャーナリスト」むのたけじ(本名・武野武治)が101歳で亡くなった。1940年に朝日新聞社に入社したむのさんは従軍記者として活躍、むのさんはかつて、戦時中の朝日新聞社の空気をこう振り返っている。検閲官が社に来た記憶はない。軍部におもねる記者は一割に満たなかった。残る9割は自己規制で筆を曲げた。

「報道の自由度ランキング」は、正確には「世界報道自由ランキング」Worldwide press freedom indexという。パリに本部を置くNGO「国境なき記者団」Reporters Without Bordersが2002年以降、2011年をのぞいて毎年発行している。

私は後述する理由からこの順位に驚かないが、せいぜい20位台あたりが妥当なところだろうとは感じていた。この発表の直前に読んだ『中央公論』同五月号の特集「ニッポンの実力」で「国際競争力27位、労働生産性21位、民主主義指標23位」が強調されていたこともある。

私と同様、この「報道の自由度ランキング」に違和感をもったジャーナリストは少なくなかったようである。

 また、2016年5月4日付『朝日新聞』の「天声人語」も、このランキングで中国政府が言論弾圧を行っている香港(69位)よりも日本の方が低いことに「驚いた」といい、「西欧中心の見方ではないかと思う」と疑念を呈している。

世論調査の数字が単独の点(ポイント)で意味をもたないように、「報道の自由度ランキング」も順位そのものではなく変動の線(ライン)として読むべきである。日本の順位は2003年(小泉純一郎内閣)の44位、2010年(鳩山由紀夫内閣)の11位、2016年(安倍晋三内閣)の72位と大きく変動するが、この時期に「ジャーナリストに対する暴力の威嚇・行使」の量的拡大やメディア法制に大きな変化があったわけではない。

つまり、この変化の要因は専門家の体感自由、主にメディア報道に由来する印象に大きく左右されているわけである。

2009年と10年は報道の「自由度が高く」、その前後の8年と12年も「比較的高い」と高評価されているが、この時期はすっぽり民主党政権期に重なる。鳩山内閣、菅内閣、野田内閣とも内閣支持率は急速に低下、低迷しており、新聞もテレビも「自由に」政権批判を全面展開できた。ジャーナリストの体感自由が高まったのは当然かもしれない。


報道の自由度trend.jpg
筆者が政権を加筆しました。


自主規制と自己検閲 、一方、「国境なき記者団」は日本の「報道の自由度」下落の要因として、特定秘密保護法などの影響で日本の報道が自己検閲状況に陥っていることを挙げている。

しかし、「自己検閲」をいうのであれば、それは近年に始まったわけでも、また安倍政権で急に強化されたわけでもない。そもそも特定秘密保護法にしてからが、その法案を準備したのは民主党の菅内閣である。

2010年9月の尖閣諸島付近での中国漁船衝突事件の映像流出に対処する法整備が直接の動機だった。「自己検閲」状況が進んだとしても、それは特定秘密保護法制定よりも先に述べた内閣支持率政治の影響の方が大きいと見るべきだろう。

結局、「報道の自由度」を左右した専門家アンケートの回答も論理的な判断というより、ときどきの政治感情、いわゆる「空気」に左右されたものと言えよう。誰が専門家として選ばれているのかは開示されていないが、日本の場合、「報道の自由」への期待値が極めて高いジャーナリストが選ばれた可能性が高い。

このように「報道の自由」が法的に規制されていない日本においては、専門家の自由への期待値は最大化されている。その高い期待水準で現状を評価すれば、その満足度が低く出ても仕方がない。期待値と満足度が逆相関になることは容易に想像がつくはずだ。
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全文をご覧になりたい方は〝https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/02/post-7031.php〟を参照ください。



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