備前・旭川の憂鬱 (「中小企業は日本の宝!?」 20-56) [日記・雑感]
安倍政権の「賃上げの仕掛け」はなぜ機能しないのか?
この問いかけには数多くのエコノミスト、学者、ジャーナリスト達が〝アベノミックスの成果〟として、自民党自身も「データー」で示しながら議論をしています。それでも良く理解できません。
数字上は間違いなく〝アベノミックスの成果〟は出ています。日常生活に直結した成果は、2018/04/29の自民の広報より、その代表例を見ますと、
❖ 有効求人倍率は、0.83 ⇒ 1.59 完全失業率は2.7%
3%を構造的失業率とすれば、完全雇用状態になっています。これは文句なく実現しました。
就職氷河期は解消は長期政権を支えた項目に違いありません。
❖ 株価 8,664円 ⇒ 22,319円
これも毎日報道されますので間違いありません。
❖ 企業経常収支 50兆円 ⇒ 81兆円
これが本来給与の大幅改善に繋がらなければならないのですが、そうはなっていません。
このpostingで議論したいと思います。
❖ 公的年金運用益 56.5兆円
株価上昇もありGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用益がこんなにも沢山出ました。
年金が今にも破綻する、というエコノミストの声も少し小さくなりました。
❖ 税収 78.7兆円 ⇒ 102.5兆円
日本国の借金は1,200兆円もあり、明日にでも破綻するぞ!?と言われています。しかし財政支出
や災害対策が膨らみ、所謂プライマリーバランスの改善には繋がっていません。
❖ 自殺者の低減 約3万人 ⇒ 約2万人
これも約1万人も改善しました。勿論〝0人〟を目指さなければなりませんが...
ここで議論したいのは次の〝表:経済指標〟です。
この数値は正しいと思いますが、現実には何かがおかしいのです。今までエコノミスト、学者、ジャーナリストが言っていた事、要するに「原因と結果」が一致しません。
景気拡張過程に実質賃金が〝マイナス〟となったような歴史は存在しません。バブル崩壊前までは、物価上昇率を超えて名目賃金の上昇が達成され、実質賃金上昇率も高い伸びを示していました。
これを補完する〝グラフ〟をご覧ください。
このグラフは〝大企業の賃上げ推移〟です。安倍政権2012-2020の間、少なく見積もっても、6,000円/年x 7年間 = 42,000円 となります。にも関わらず、実質賃金は指数で5ポイント、消費支出は10ポイント近くも低下しています。不思議です。賃上げは何処へ行ったのでしょうか!?
筆者のように現役を退き、年金生活に入ったので実質賃金が低下したという説明もありました。
またサヨク的には、雇用が増えたと云っても、それは正社員ではなく契約社員や派遣社員ですから賃金が低い、というものです。
さらに、収入が増えたので社会保険料が上がり、実質収入が減ったとか、以上何れも全く納得できません。
そこで出くわしたのが、David Atkinsonさんの著作「国運の分岐点」、副題「中小企業改革で再び輝くか、チャイナの属国になるか」と刺激的です。です。以下ポイントを項目的に列挙します。本内にはデーター・グラフがありますが省略します。
■ 先進国の中で唯一、経済成長していない。
■ デフレから何時まで経っても脱却できない。
2016年の人材評価(WEF)ランキングでは、OECD(経済開発協力機構)加盟国で第4位にランクされ、2018年の国際競争力ランキングでも世界第5位です。人材の質は高いという事です。
〝第2章 日本経済の最大の問題は中小企業〟と来ます。
あれぇ!?日本では〝中小企業が日本を支えている〟と言われ続けてきましたよね。メディアでは東大阪や大田区の小規模な技術力のある町工場が取り上げられます。例えば、岡野製作所のおやじは深絞り技術で「時の人」になりましたね。
続きます。日本の「生産性向上」の障害になっているのは、日本企業の99.7%を占めて、これまで日本経済を支えると云われてきた357万社の中小企業だ、と断言されています。
〝いつも空振りの「国策」〟と手厳しいです。日本は中小企業と云っても非常に小さい企業で働く人の割合が異常なほど高すぎる、そうです。
政府が鳴り物入りで「働き方改革」とか「女性が働きやすい社会」とか云っても、政府が悪い、行政の縦割りが悪い、と云っても結局「大企業に働く人が少なく、中小企業に働く人が多い」と云う「社会構造」に突き当たる、と断じています。
企業の規模が大きくなればなるほど、女性の活躍が活発になることが判っている、ようです。同様に、世界的にも企業が大きくなればなるほど、社員教育が充実される傾向があるそうです。
I T化にしても、先端技術の導入にしても、日本企業が生み出す先端技術は、世界に誇れるレベルではあるのですが、その割には社会への普及が低く遅れています。この矛盾はやはり中小企業が多いからだそうです。
例えばアメリカとの比較をした表があります。全く比較になりませんよね。
しかしながら、日本の大企業も「第3の矢」を安倍さんに任せ過ぎています。未だに飛ばないMRJは一体全体どうなったのでしょうか?こんな事が日本の大企業の中で一般化していてはお先真っ暗です。
折角、新政権が誕生しますので(多分、菅義偉内閣)では、この辺りを議論して頂き、アベノミックスの成果が、何故に個人や地方に波及しなかったのか?を今までとは全く異なる視点で考えて欲しいものです。
当postingのデーターは以下を参照し引用しました。
・デービッド・アトキンソン著「国運の分岐点」2019、講談社α新書
・東洋経済オンライン
・日経ビジネスweb
・DIAMOND online
・JIJI.COM
2020-09-03 22:35
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