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備前・旭川の憂鬱 ( カナダ AIIB離脱示唆 2023/06/14 23-25) [日記・雑感]


2023/06/15 【ニューヨーク、北京時事】カナダのフリーランド財務相は14日、同国が加盟するアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、「すべての活動への参加を直ちに中断する」と表明し、中国が主導するAIIBからの脱退を示唆した。カナダ出身のAIIB幹部が、同行は中国共産党に支配されていると批判し、辞任したことを受けた。

と配信しています。

その後、日本のメディアは筆者が見る限り、続報を発信していません。AIIB発足の頃のことを思い出して、あの時の政府の判断は正しかったのだ!と改めて感じました。


2023/07/04配信の[The News Lens Japan] は以下のように述べています。

カナダ政府 チャイナ主導のAIIBの取引停止、脱退の可能性も示唆。AIIBカナダ人幹部〝AIIBはチャイナ共産党に支配され有害な文化を持っている〟と批判。

ピカード氏は今年3月に国際広報責任者に就任した。英国のフィナンシャル・タイムズ紙によると、ピカード氏は〝チャイナ共産党はAIIB内部の目に見えない政府のようなものだ。私はそれに参加したくない〟そして〝私は利用される愚か者になりたくはないのだ〟と述べた、そうです。


AIIB「アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank)」の設立経緯と現状を見てみます。

2014年にチャイナの主導で57ヶ国を創設メンバーとして設立されました。本店は「北京」です。

2023/06現在、92ヶ国・地域が加盟しています。フランス・イタリア・英国・オーストラリアなど西側諸国も含まれていまして、AAA格付けを取得しています。日本・アメリカは参加を見送っていてます。

AIIBは発足当初、投融資額を100億米ドルから150億米ドルと想定、累計では740億米ドル程度になるはずでしたが、実際は200億米ドル程度(日経2020/07/28)のようです。単年度では68億米ドル程度だそうです。

そしてこれが最大の問題ですが、AIIBはチャイナが筆頭株主で議決権26.6%を持っていることです。


日本・アメリカは、1966年に設立した、ADB「アジア開発銀行(Asian Development Bank)を主導しています。2023/06現在、67加盟国・地域からなり、内48がアジア・太平洋の国・地域です。本店は「マニラ」です。黒田東彦前日銀総裁もこのADBのトップでした。

出資比率は日本が15.624%、次がアメリカです。ADBの投融資額は年間で200億米ドルの規模となっています。


そもそもアジアの開発には、既にADBがあるにも関わらず、チャイナはなぜAIIBを発想したのか?です。

これは明らかでして〝下心丸見え〟です。チャイナ主導の〝一体一路〟計画を早期に実現するため、他国からもお金を出させよう、といった狡猾な発想と、日本・アメリカの既存秩序への挑戦です。

さらに言えば、アメリカ主導の既存の国際金融システムに対抗する機関を創設するためです。アメリカが世界の覇権国家となったのは「世界銀行」と「IMF(国際通貨基金)」を中核とした国際金融システムを構築したことと大きく関係しています。


そこで再度2014年当時の状況を思い出してみましょう。

すでにアメリカはAIIBに不参加を決めていました。日本は安倍政権でして、チャイナとの関係より安全保障で重要な「日米安保条約」を優先し、AIIB不参加を決めました。

当時の副総理兼財務大臣の麻生太郎氏は、融資審査に不明瞭な部分があるので、極めて慎重な態度を取らざるを得ないとし、2015/03末時点で不参加、見送る方針を明らかにしました。

麻生太郎さんはメディアからは嫌われ者でして(筆者は過去数回、当blogへ投稿しています)、未曽有をみぞうゆうと読んだとか、チェコ訪問時、うっかりと既に分離独立したチェコをチェコスロバキアと言ったとか、ホテルオークラのバーで酒を飲んでいるとか、兎に角、揚げ足取りの絶好の対象人物でした。

しかし、国を左右する重要な決定は間違っていませんでして、いかにメディアは無責任かを示しています。

これに対し、日本がこのままAIIB不参加であるならば、アジアでのビジネスチャンスに乗り遅れるのではないか?という産業界やメディアからの心配〝バス乗り遅れ論〟の声もありました。

親中派議員として知られる福田康夫元総理、当時幹事長の二階俊博、当時民主党の岡田克也議員、なんとAIIBの諮問委員の鳩山由紀夫元総理らは、AIIBへの参加を決断すべきと主張していました。

当時の産経・読売による世論調査では、参加に反対とする声が過半数となっており、日経の調査では〝AIIBのイメージはチャイナの言いなりになりそう〟が、61%、〝組織運営が不明瞭〟が22.5%でした。


現在、どうもAIIBの投融資額は伸び悩んでいるようです。新型コロナの影響で、インフラ投資が遅れているとされていますが、そもそも投資案件自体の開拓も満足にできていないようです。また投融資を実行する専門家の人材も不足しています。

足元の職員の数は500人ほどでして、ADBの10%強程度しかいません。


チャイナが影響力を拡大するための道具という側面が見え見えのAIIBに関しては、参加国も警戒していまして、「G7広島サミット」においても、チャイナ(国名は書かれていない)の行動を牽制する内容が成果文書のセッション5「経済的強靱性・経済安全保障」に記載されています。

もっともAIIBとADBが完全に対立してるのではありません。ADB側も〝大人の対応〟をしていまして、例えば、2016/06、ADBとAIIBはパキスタンの高速道路建設に対して協調融資を行うことを決めています。

もしも、このAIIBに日本が参加していたら、既に顕在化している「債務の罠」ではありませんが、不良債権の後始末を全て日本が払わされることになったでしょう。チャイナはそのくらいの事は〝昼飯?前〟です。


以上のような状況でして、日本に限らないと思いますが、メディアには最大限のリテラシーと注意深さを持って見聞きしたいものです。不利益を被るのは我々日本人です。先ずメディアは〝疑いましょう!〟



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