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備前・旭川の憂鬱 ( 『地球温暖化で人類は絶滅しない』 23-17) [日記・雑感]


Michael Shellenberger著 『地球温暖化で人類は絶滅しない 環境危機を警告する人たちが見過ごしていること』科学同人2022/07/10発行 を連休中に斜め読みしました。

表紙 - v409.jpg

平素、筆者が思っていることを、Michael Shellenberger:マイケル・シェレンバーガーさんがそのまま上梓頂いた感じです。適宜、引用します。引用は原則〝〟で示します。


〝2019年、2編の(※気候変動に関する政府間パネル)IPCC報告書、両者とも悲惨な結果を警告する。自然災害の悪化、海面上昇、砂漠化、土地の劣化、〝1.5℃〟という中程度の温暖化、「長期的に、または不可逆的な」被害をもたらす。〟といつものメディアの悪い癖である読者を煽り、脅します。※筆者注

実在の記事〝New York Times紙は「地球温暖化が資源不足を悪化させ、洪水・旱魃・暴風雨、などの異常気象は世界の食料供給を乱し、長期的には縮小させてしまうおそれがある。」〟

メディアは権威付けとして〝NASAの科学者は「複数の食料供給システムが崩壊する潜在的リスクが高まっている。」〟

同じく2019年初め、アレクサンドリア・オカシオ・コルテスさんAOCは「グリーン・ニューディール」政策を主張、お金がかかりすぎるという批判に、〝気候変動に対処しなければ、世界は12年以内に終わります。それなのにあなたたちは、その費用をどう負担していくかということを心配するのですか〟と。

この12年の意味は、2019年から12年の2030年を意味し、そんなに近くなく、そしてそんなに近くない丁度いい感じの期間と考えらます。

〝実はIPCCは、「地球が終わる」とか、「文明が終わる」とは言ってません。〟これが事実です。以下がその裏付けです。

〝IPCCが2018年の報告書と記者発表で述べていたのは、産業革命前からの温暖化を〝1.5℃〟に抑えるためには、2030年までに炭素排出量を45%減少させる必要があるという事だ。IPCCは気温上昇が〝1.5℃〟を超えたら、世界が終わる、とは言っていないし、文明が破壊するとも言っていない。〟


1901年から2010年の間に世界の海面は〝7.5 in≒19 cm〟上昇したが、IPCCの中間シナリオでは、2100年までの海面上昇は〝2.2 ft≒66 cm〟、最悪のシナリオでも〝2.7 ft≒83 cm〟と予想されている。

この予測値が大幅な過小評価であったとしても、海面上昇のペースは遅いので、社会がそれに適応するために充分な時間が確保できる可能性は高い。

当blogでは、https://ironbridge-uk.blog.ss-blog.jp/2023-01-18 で、中川毅著『人類と気候の10万年史』を引用し、過去には海面の上昇・下降は何回もあり、数万年前には水位が350年ほどの間に〝20m以上〟も上昇したことも経験している、と科学的データーで示しています。。

〝海面上昇に上手く適応した良い例がある。オランダは土地が徐々に沈下したので、国土の1/3が海面下になり、海面下7mまで沈降した地域もある。それでも豊かな国になった。〟

日本でも東日本大震災後の三陸の復旧を見ても分かります。人間はボーと手をこまねいている訳ではありません。


〝山火事はどうか。カリフォルニア州のアメリカ地質調査所で40年間研究を続けたジョン・キーリー博士はこう語った。〝州全体の気候と、これまでに起こった山火事を見てきましたが、州の大部分、特に西半分では過去の気候と各年の焼失面積との間には何の関係も見られませんでした。〟

〝人間の存在は、火勢に影響を与えるだけでなく、気候の影響を実際に見えなくしたり打ち消したりする可能性がある。〟

〝毎年起こる山火事の頻度や規模と統計的に有意な関係があったのは、人口と火災現場から開拓された土地までの距離しかないことを明らかにした。〟


〝国連食糧農業機関(FAO)によれば、前世紀と同じく食糧生産は、気候変動よりトラックターや灌漑、肥料へのアクセスに左右される。アフリカのサハラ砂漠以南のような極貧地域の農家さえ、技術的な改善を行うだけで収量を40%増加させることができる、とFAOは予測している。〟

〝IPCCは、2100年までに世界経済が現在の3-6倍の規模になると予測しているが、ノーベル賞経済賞受賞者ウィリアム・ノードハウスは、〝4℃〟という高い気温上昇があっても、それに適応するためのコストはGDPを僅か〝2.9%〟しか減少させないと考えている。〟

〝これからいったいどこが世界の終わりと聞こえるのだろうか。〟とMichael Shellenbergerさんはその著書の中で述べています。


2021/11のCOP26のGlasgow Pactでは、対策の講じられていない石炭火力発電所の削減、フェーズダウンが盛り込まれました。議長案では「廃止・フェーズアウト」と記載されようとしたのですが、インドとチャイナの反対で「フェーズダウン」となりました。

この妥協案に「石炭に未来がない」と不満を表明し、議長は涙を浮かべて最終案を採択したそうです。この時の議長は、ほとんど悪徳宗教に憑りつかれた方のように見受けられます。

IPCCはCOPという踊るだけの会議にうつつを抜かすのではなく、悪戯に科学者への研究・シミュレーションに貴重なお金、それも数兆円も投入するのではなく、その一部を対策費として開発途上国へ割り振るべきです。


OurWorldInData. 2019 の投稿に、興味深い図表が掲載されています。これがIPCCの主張がすんなりと受け入れられない根拠です。この100年間、天然災害による死者数はそれほど変化はありませんが、ICPPの主張する災害による死者数は〝指数関数〟的に減少しています。

climate-related deaths - 409.jpg

欧米人の古くからある考え方、自然を征服する・気候変動と対峙するのでは無く、日本に古くからある考え方である、自然に「適応」するという考え方で対処する方が、余程平和裏に、そして効率的に物事が解決できると思います。



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