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備前・旭川の憂鬱 (イランとアメリカ 19-70) [日記・雑感]


イランとアメリカの論争が大きく報道されています。このような案件は若干でも歴史や過去の経緯が知識の片隅にでも無いと、サッパリ理解できないか、メディアに煽られて間違った理解をしてしまいます。

ではイランとはどのような国柄なんでしょうか。先ずは外務省のHP 「イラン・イスラム共和国(Islamic Republic of Iran)」 基礎データ・略史とその他のweb上の資料より紐解いてみます。


アケネス朝ペルシャ(紀元前5世紀)、ササン朝ペルシャ(紀元3世)時代には大版図を築く。

その後、アラブ、モンゴル、トルコ等の異民族支配を受けつつもペルシャ人としてのアイデンティティーを保持し、1925年にパーレビー朝が成立。

確かにイラン人はペルシャ人としての誇りをかなり強烈にお持ちのようです。この辺りがユダヤ人と同様の環境にあったのかな!?と考えます。

1979年,ホメイニ師の指導のもと成就したイスラム革命により現体制となる。

これはよく覚えています。パーレビ―朝はアメリカ資本と結んで石油資源の開発などを進め、その利益を独占する開発独裁の体制を続けていた。皇帝パーレビ―2世の強行した「白色革命」以来、政治、文化、日常生活などあらゆる面で西欧化を進めていたが、国民生活は向上せず、対米従属の度合いを増していた、とあります。

1979/11にはイラン人によるテヘランの「アメリカ大使館占拠事件」が起き、1981/01まで占拠が続いた。

革命政権は1979年から国号をイラン=イスラーム共和国と改め、イスラム教シーア派(十二イマーム派) の聖職者の指導する国家として出発した。

さらにオイルメジャーズ(国際石油資本 筆者注:当時はseven sistersと呼ばれていました。) が革命の混乱を避けて撤退したのを受けて、石油国有化に踏み切り、資源保護の立場から石油輸出を制限する措置を打ち出した。そのため石油の国際価格が急上昇し、第2次石油危機をもたらすことになった。

どうもこの辺りからイランとアメリカの抜き差しならぬ反目が顕在化したようです。

次がアメリカからすれば全く許せない行動をイランが後押しする勢力、レバノン・ヒズボラが起こしました。それは1983/10/23の「レバノン駐在 海兵隊兵舎爆破事件」です。

1983/10/23、レバノンの多国籍軍の米仏軍兵士の居住施設でトラック爆弾が爆発、その攻撃で、241人の米海兵隊員を含む何百人もの兵士が殺害される。多国籍軍は国際平和維持活動の一環としてレバノンに駐留していました。ヒズボラがこの攻撃を画策し、イランからの支援と資金提供により実行に移したと考えられています。

これでイランとアメリカは、決定的に〝敵対関係〟になったのです。

オバマ大統領の任期は2009/01/20- 2017/01/20日の8年間でした。筆者はオバマ大統領を〝なんにもしない、ただ演説が上手いだけ〟の大統領と思っています。この間もイランとアメリカの間では深刻な反目が継続されていました。


2016/08/19 09:17 NIKKEI WEBによりますと、
イランへの400億円支払い、米政府「事実」人質解放後に 【ワシントン=川合智之】 米国務省のカービー報道官は2016/08/18の記者会見で、イランで拘束された米国人が今年1月に解放された際に米政府が4億ドル(約400億円)をイランに払ったことに関連し、解放を待ってイランに現金を渡したとの報道を「事実だ」と認めた。「身代金は払っていない」と述べ、人質解放とは無関係だと強調したが、事実上の身代金だったとの見方が強まっている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。2016/01/17にアメリカ人3人がテヘランからスイス空軍機で解放された後、ジュネーブの空港でイラン航空機がユーロとスイスフランの紙幣で4億ドル相当の現金を積んでテヘランに出発したという。

4億ドルはオバマ米政権が昨年の「イラン核合意2016」に基づき、支払いを約束していた和解金17億ドルの一部。米政府は誘拐犯らに身代金を支払わない方針を掲げているが、野党・共和党は事実上の身代金にあたるとして批判していた。


これはごく最近の事件ですが、日本国内ではそれ程深刻には報道されていなかったのではないでしょうか。ここで重要な事象は〝オバマ前米政権が昨年の「イラン核合意」に基づき、支払いを約束していた和解金17億ドル〟です。

なーんだ、オバマ前大統領は「イラン核合意」を交渉ではなく、金を払って合意にこぎつけたのか!?という汚名です。


トランプ大統領は最近のtwitterで、〝オバマがイランと結んだ合意は、無謀でとんでもないものでした。1500億ドル(約16兆500億円)に加えて、キャッシュで18億ドル(約1926億円)も与えたのです! 当時、大きな大きな問題を抱えていたイランを救済することになり、核兵器へのフリーパスを与えてしまった。〟と主張しています。筆者は数値の正確さを検証していませんし、できません。


トランプ大統領は〝オバマ大統領のやったことは、何でも反対(これはこれで困ったものです)〟ですから、1983年の「海兵隊兵舎爆破事件」以降のイランとアメリカの関係を苦々しく思ってたトランプ大統領にすれば、イラン憎し、オバマ憎し!でしょう。

「イラン核合意」離脱は、大統領再選のためのキャンペーンの意味も否定はできませんがが、それ以上にアメリカ国内の合意形成があるように感じます。


それではイランは何故に核開発を急ぐのでしょうか。元々イランが北朝鮮のように、原爆であれ原発であれ、核開発をやる〝意思〟がなければ、「イラン核合意」は必要ありませんでした。前述のアメリカ側からではなく、イラン側から少し調べてみました。

イラン人は誇り高い民族であります。自分たちの歴史に大きな誇りを持つ一方で、過去の経験から外国勢力に対する強い不信感を持っています。イランの政治体制はかなり特異です。宗教指導者が上位にあり、政府はその配下にあります。チャイナの共産党と政府の関係に似ています。

そのためイラン政府は、孤立感を感じており、外国勢力が体制崩壊を狙っていると警戒しているのだそうです。

その一つが1953年にCIA(アメリカ中央情報局) がイランでクーデターをやらせたことを忘れていません。

1953年、パーレビ―朝イランで石油国有化を断行したモサデグ政権を倒した軍部クーデターがありました。これによっていったん実権を失い海外に亡命していたパーレビ―2世が帰国、パーレビ―朝を復活させ、イランの石油国有化を中心とする民族主義政策は挫折した。このクーデターはイギリスの石油資本(アングロ=イラニアン石油会社)とアメリカのCIAが仕組んだものとされています。

これ以後は石油市場を安定させるため七大石油会社(前述のseven sistersです。)の合弁会社がパーレビ―2世と協定を結びイランの石油生産を支配することとなりました。ここ解説は「世界史の窓:https://www.y-history.net/index.html」を参照しました。

2002年,イランによる18年間にわたる未申告の核開発活動が発覚しました。イランは核拡散防止条約(NPT)に加盟しています。イランは産油国にも関わらず、その枠内で原子力の平和利用を追求する権利があると主張しています。この主張には誰も反対していない。2011年秋には、ロシアの援助で完成したブシェール原子力発電所が稼働しているようです。

2004年のEU3(英仏独)とのパリ合意に基づき同活動を停止しましたが,2006年以降,ウラン濃縮を再開・継続(イランは,平和目的と主張,IAEAとは一定の協力) しています。その後イランと欧米諸国、ロシア、チャイナとの複雑怪奇な交渉が継続しています。

そして、2018/08、トランプ大統領による「包括的共同作業計画(JCPOA)」の離脱に伴い、アメリカ国内法に基づく核関連制裁の一部につき再適用が開始されました。


全くの素人判断ですが、イランは欧米の国々に国の主権を差配されることを〝よし〟としない、という事でしょうか。



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