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備前・旭川の憂鬱 (原発に関する本当に珍しい〝ニュートラル〟な記事s 21-10) [日記・雑感]


一般的に海外のメディアは、日本国や日本人を扱う記事で、皮相的にしか日本を見ていないと思われることが散見されます。皮相的なる一つの原因は、情報源が国内の一部のバイアスのあるメディアを参照しているのではないか、と思っています。 

先ず現在、2021/03/12、日本の稼働中の原発は、各社のweb siteを引用します。

 ❖九州電力 
  玄海3号機 118万kW
  川内1号機 95.9万kW
  川内2号機 96.2万kW

 ❖関西電力 
  大飯4号機 118万kW
  高浜3号機 87.0万kWの内75%の出力で立ち上げ中(2021/03/12現在)

 九州電力web原子力発電所の運転状況・リアルタイムデータ
 http://www.kyuden.co.jp/nuclear_real.html

 関西電力web原子力発電所の運転状況https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nuclear_power/info/monitor/live_unten/index.html


そして海外では以下の記事を見つけました。

ドイツ「核出口が近づくにつれ、ドイツは厳しい問題に直面している」
Jean-Philippe LACOUR 2021/03/05 (一部を引用)

〝2022年の終わりまでに、ドイツは2011/05/30にアンゲラ・メルケル首相によって設定された原子力発電を完全に段階的に廃止するという目標を達成するでしょう。それは、最初に冷戦紛争の恐れによって、次にチェルノブイリのような災害によって煽られた、強力な反核運動のある国で広く一般の支持を得ました。〟

〝マイヤーによれば、プラントが廃止された後、サイトからすべての放射性物質を除去するのに少なくとも50年かかるでしょう。ドイツ政府は、国の残留核廃棄物の長期保管場所をまだ探しています。〟


仏原発32基、50年稼働可能 規制当局、延長認める 共同通信 2021/02/26
〝【パリ共同】フランス原子力安全局(ASN)は25日、国内の原発のうち主に1980年代に稼働を始めた32基に関し、安全性強化を条件に運転期間を40年から50年に延長することを認める決定を発表した。〟

〝決定は23日付。フランスでは現在56基の原発が稼働し、32基は最も古いグループ。フランスは原子力が総発電量の約70%を占めており、今回の決定は運営主体のフランス電力だけでなく、原発を引き続き重視する同国政府にとっても重要な意味を持ち、政策継続が可能となる。〟

これらの記事は従来より日本のオールドメディアが報道してきた通りです。一方、同じ欧州でもスウェーデンは一味違います。


スウェーデン「欧州、脱原発でせめぎ合い=気候変動で再評価も—福島第1原発事故から10年」
2021/03/06 時事通信 (一部を引用)

〝スウェーデンの中道右派野党で、原発を支持する穏健党のエネルギー政策広報責任者、ヤルメレット議員はこう話す。
電力のうち水力と原発がそれぞれ4割を占める同国は、2040年までに再生エネ電力100%を目指す一方、脱原発の期限は設けない玉虫色の方針を取っている。背景には、再生エネへの期待が大きい一方、原発支持も根強いことがある。〟

〝昨年11月の世論調査では、39%が新設も含め原発支持、31%が新設なしでの原発維持を求め、政治主導の脱原発支持は16%にとどまった。スウェーデンの消費者向け電気代は、再生エネへの補助金で高騰したドイツの3分の2程度で、CO2排出量は欧州連合(EU)加盟国で屈指の低さ。〟

〝ヤルメレット氏は、安定電源の原発と水力など自然エネルギーの「良好な組み合わせ」の成果だと強調する。〟

このように、日本のメディアではほとんど報道されません。都合の悪い記事はいつも〝報道しない自由〟を駆使しています。


今年に入り、「東日本大震災・福島原発事故後10年」という括りで色々な言説がSNS等で飛び交っています。勿論、玉石混合です。リテラシーが必要です。その中に〝原発に関する本当に珍しい〝ニュートラル〟な記事〟が目に付きます。

以下、個別にご紹介します。

極めつけは、国連のリーフレット「東電福島事故後10 年: 放射線関連のがん発生率上昇は みられないと予測される」です。リンクを参照ください。 https://www.unscear.org/docs/publications/2020/PR_Japanese_PDF.pdf

趣旨は〝放射線被ばくが直接の原因となる健康影響(例えば発がん)が将来的に見られる可能性は低いと言及している。〟です。これに対して〝そんなことはない〟と噛みついている日本語のSNSも散見されます。


英科学者、福島原発事故を分析 「チェルノブイリと違う」―東日本大震災10年 2021/03/11

〝【ロンドン時事】東京電力福島第1原発事故から10年を迎えるのを前に、英科学サイト「サイエンス・メディア・センター」は10日、原発事故の影響を分析した科学者の見解を掲載した。マンチェスター大学のリチャード・ウェイクフォード教授は「幸いなことに、一般市民が受けた放射線量は1986年の旧ソ連チェルノブイリ事故からは程遠いものだった」と指摘した。〟

〝同教授は「放射性ヨウ素の摂取が限定的だったのは、地元の牛乳の供給禁止などの適切な対応によるものだ」と称賛。「チェルノブイリ周辺で見られた小児甲状腺がんの多発は、今回繰り返されないだろう」と総括した。〟

さらに、〝ポーツマス大学のジム・スミス教授は「驚くべきことに、事故の結果で最も壊滅的だったのは気候変動への影響だ」と強調。事故後にドイツが原発から石炭火力発電に移行したことを挙げ、「大気汚染の増加と余分な二酸化炭素の排出で、年間1,000人以上の人命に影響を与えた」と語った。〟

オイオイ、随分変わりましたね。10年前、〝一般市民が受けた放射線量は1986年の旧ソ連チェルノブイリ事故からは程遠いものだった〟を、オールドメディアが少しでも報道すれば、福島県民が被った〝風評〟も少しは緩和されたのではないか、と悔やまれます。

〝大気汚染〟は前回の拙blog https://ironbridge-uk.blog.ss-blog.jp/2021-03-06 を参照ください。


英国のThe Economistは中道左派のメディアですが、この記事を日経が記事にしています。〝「フクシマ」の意外な教訓〟2021/03/10、https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/world/00339/?n_cid=nbpnb_mled_mre が興味深い論理を展開しています。

〝東日本大震災による福島第1原発事故から10年。先進諸国では原発の利用が縮小を続けている。しかし気候変動対策は急務であり、脱炭素化のために原発は欠かせない。チャイナとロシアは輸出を続ける。福島の事故が残した教訓は、原子力発電を避けることではなく、賢く利用せよということだ。〟

〝ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、国内で稼働する原発の段階的な廃止を命じた。同首相は、反原発運動が盛んなドイツで、運動と対立する産業界の指導者の側に長く立っていたにもかかわらずだ。チャイナでも、進行中だった世界最大規模の原発新設計画が棚上げされた。気候変動対策として「原子力ルネサンス」を議論する声も力を失った。
人々がこうした反応を示すのは理解できる。だが、間違っていた。〟

〝原子力発電はきちんと管理されていれば安全であることだ。ソビエト連邦(当時)時代にチェルノブイリで起きた恐ろしい事故以外に、原発事故が多数の死者を出したことはない。福島で失われた命のほぼすべては津波によるもので、放射能によるものではなかった。〟

〝原子力発電はこの一部を供給できる。太陽光発電や風力発電は現在かなり低コストになっているものの、安定性に欠ける。発電能力の一部が常時稼働可能であるならば、安定した電力網をはるかに容易に構築できる。

 原子力はこのような発電能力を、二酸化炭素排出量ゼロで実現する。実際、世界中で今、原発はそのような発電を安全かつ大規模に行っている。〟

〝原子力が抱える最大の弱点を示唆している。民主主義諸国では、規制と国民の反感ゆえに新規の原発建設が難しく、結果としてコスト高になる。そのため、この技術は次第に独裁国家の領分となってきている。独裁制はまさに、適切な規制が最も行われそうにない体制だ。

 チャイナの原発建設計画は福島の事故のあと中断していたが、現在は、石炭依存から脱却する取り組みの一環として逆に加速している。チャイナの原子力による発電量は19年、11年当時の4倍に拡大した〟

〝原子力発電には、津波に匹敵する大きな欠点がある。だが、チャイナで現在建設中の原発は22世紀まで使われる。なくなればいいと願うだけでは、なくすことはできないのだ。しかも、原子力発電は気候変動との闘いにおいて、極めて重要な役割を担う。原発を忌避するのではなく、賢く利用する。それが福島の教訓である。〟

「原発を忌避するのではなく、賢く利用する。それが福島の教訓である」とは驚きの結論です。


中川 淳一郎さん、ネットニュース編集者の投稿、2021/03/11、〝10年目の福島報道に「非科学的な寄り添い方」はもういらない、実は「コロナ問題」も根っこは同じ〟 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81023?imp=0 は、従来より流布されたオールドメディアとは全く異なる言説になっています。

〝東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故から10年になる。この未曾有の大事故について我々は今、どう解釈すべきなのかーー。もしかすると「未曽有の大事故」という表現に、関西以西の多くの方々にはピンと来ないかもしれない。何しろ「遠い場所の出来事」だからだ。〟に始まります。長文ですので、全文はLinkを参照ください。

要点を引用します。
・非科学的な寄り添い方はもうやめよう。
・科学が風評被害に負けるわけにはいかない。
・処理水の海洋放出を実行すべき。
・福島で放射線による健康被害はなかった。甲状腺検査の継続は倫理的問題がある。
・食品中の放射性物質の基準値を国際基準に合わせるべき。
・「フクシマ」は止めよう、差別です。「福島」です。
等々従来言われてきた事とは正反対です。そして、

〝メディアは基本的に、「東電は悪者かつ無能」「政府は無策」「原発は不要」といった3つを主張してきた。それはそれでいい。しかし、そろそろ先に進まなくてはマズいのではないか。散々批判したのであれば、その後は解決のスピードを速めるための建設的な議論にしなくてはならない。〟とポジティブです。そしてメディア批判です。

〝コロナでも明らかになったように、地上波テレビの圧倒的影響力はあれから10年が経った今でも福島に対する差別の助長に寄与していると感じた。〟


最後に、Wedge REPORT 2021/02/12、林 智裕さん フリーランスライター〝今こそ、なぜ「フクシマ神話」が生まれてしまったのかの検証を、事実を超越した言論が生み出した「冤罪」〟。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22145 です。論旨は明快です。

この災害で彼らが陥ってしまった過ち、エラーが生まれた背景にある一因を大きく3つ考察してみます。

① 人の思惑が及ばない自然科学的事実を軽視し、自分達が信じたい「真実」を上位に据える自由を行使した(≒議論や対応の前提となる客観的事実や情報が正しく共有できない)

② 国民の安全と健全な民主主義を護る手段としての「権力の監視」自体が目的化し、逆に害を及ぼした(≒復興も含めた様々な政策への執拗な妨害と国益の損失)

③ 自らも別の巨大権力であるという自覚無きまま暴走し、恣意的に弱者を選別したり弾圧したりした(≒権力に抵抗しているつもりで被災地・被災者の利益や人権を攻撃)

 こうしたエラーと向き合い、これから我々はどう言論の場を作っていくべきなのか。これは本来、この10年の間に大きな問題として詳細な記録を作成して後世に伝え、議論しなければならなかった課題と言えるでしょう。


以上、ご紹介しましたが、何れも従来の国内外の論調と大きく変わっています。原発に関する本当に正統と考えられる〝ニュートラル〟な思考になって来ました。大変喜ばしいことです。



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