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備前・旭川の憂鬱 ( 欧州への過剰な美化 19-02) [日記・雑感]


アーセン・ベンゲルの言葉を思い出します。

アーセン・ベンゲルは「日本人はヨーロッパを美しく誤解している。日本人と比較すればヨーロッパ人の民度は恐ろしく低く、日本では当たり前に通用する善意や 思いやりは全く通じない。隙あらば騙そうとする奴ばかりだ」と。アリャリャです。

アーセン・ベンゲル (Arsène Wenger)をご存じない方も多数いらっしゃると思います。アーセン・ベンゲルを語るには〝Jリーグの元名古屋監督(1995-1996)〟であったと説明するのが近道かなと思います。

フランス・アルザス地域圏バ=ラン県ストラスブール出身のドイツ系フランス人のサッカー指導者、元サッカー選手。現役時代のポジションはMF、アーセナルFC監督(1996-2018)、2002年にフランス政府よりレジオン・ド=ヌール勲章を受勲し、2003年イギリスサッカーに対する功績により大英帝国勲章を受勲しました。

筆者は都合2度愛知県在住でしたので、元名古屋グランパス監督のアーセン・ベンゲルには親近感を持っています。


前置きが長くなりましたが〝雨宮紫苑さん〟が大変興味深いblogをuploadされていました。それは『「ドイツに残業がない」なんて、真っ赤なウソ。海外を理想化しすぎる人の言葉には、気をつけよう。雨宮紫苑2018/12/26』です。前述のアーセン・ベンゲルの「言」をフォローしています。


「脱亜入欧」ではありませんが、以下雨宮紫苑さんの投稿を引用しながら、日本の進歩的文化人や出羽守さんの言説を修正したいと思います。引用部分は〝〟で示します。

〝欧米を理想化してきた日本人。「他国から学べることはある。しかし実態を捉えないままではなにを真似すべきかの判断ができない。理想化された海外情報の広まりは危惧すべき」/「ドイツに残業がない」なんて、真っ赤なウソ。海外を理想化しすぎる人の言葉には、気をつけよう。〟

〝わたしはドイツに来た当初、よく「日本は長時間労働だけどドイツには残業がないからいいよね」なんてよく言っていた。それに対するドイツ人の反応は予想外のもので、100%「ドイツにも残業はある」と返ってくるのだ。たぶん30人以上とことやり取りをしたが、答えはいつも同じ。〟


これは1985年頃から1995年頃の大凡10年間、イギリス人やドイツ人とビジネスで付き合ってみて実感しました。日本と欧州はイギリスを除き冬季8時間、夏季7時間の時差があります。

ですから日本時間の夕方懸案事項をfax(当時インターネットはありません)すれば、ドイツ時間の午前中に着信します。順調な時はドイツ時間の夕方返信のfaxを送信すれば、日本時間の真夜中にfaxは着信します。それを翌朝ピックアップすれば、お互いに極めて効率の良い〝24時間働く〟ビジネスになります。

しかしながら、faxの送信時間が21時頃とか夜半になる事も多々ありました。日本側はドイツ時間の夜半でも朝にはピックアップできますので問題ありませんが、彼らはしっかりと数時間の残業をやっています。勿論、筆者のビジネス以外で忙しかった事も考えられます。


雨宮紫苑さんの言説が続きます。

〝労働研究所の職員の方に取材をさせていただいたときも、「ドイツに残業がないなんて言われているんですか? どうして?」と逆に驚かれたほどである。どうやら、わたしが触れてきたドイツ情報は、理想化されすぎていたらしい。〟

どうやら「カラクリ」があるらしい!?と理解できます。筆者も現役時代から、おかしいなあ!?と思っていました。

〝『ドイツは残業ゼロ』というまやかし。たとえば、「OECDの統計では、日本の平均労働時間1,710時間と長時間に対し、ドイツはたったの1,356時間。OECDで一番労働時間が短く残業はない。それなのに経済大国なんて、さすがドイツ」というのが、典型的な『理想化されたドイツ』だ。〟

〝この統計によると、OECDの平均労働時間は1,756時間。実は、日本の労働時間だって平均より少ないのだ。〟


ここからが本質・本論です。

〝また、この統計は、フルタイム労働者の平均労働時間を表しているわけではない。ドイツは15歳から64歳の女性の46%、実に半数弱の女性が時短ワークしている国で(連邦統計局)、そういった女性たちを含めての平均労働時間である。労働時間の話をするなら、フルタイムワーカーで比べるべきだろう。〟

たとえばBAuA (筆者注:Bundesanstalt für Arbeitsschutz und Arbeitsmedizin・ドイツ労働安全衛生研究所))の統計を見ると、ドイツのフルタイム労働者の5人に1人は、週48時間以上働いている。それなりの割合の人が残業していると解釈できるのだが、『残業なしドイツ』の文脈で語るとき、こういった数値は無視され、なぜか「総労働時間」の話にすり替わっていたりする。そもそも、「総労働時間が少ない」から「残業していない」という因果関係も成り立たない。

これ以上の蛇足は無用です。さらに、

〝ドイツにだって納期や繁忙期はあるし、どうしても結果を出すべき仕事もある。〟

〝「定時なんでお先〜」と明日締め切りの仕事を放り投げる部長が、それでも評価されるのだろうか。いくらドイツでも、さすがにそれはない。〟

〝日本のように「クライアントの無茶振りで終電まで働く」、「なんとなく帰れない」、「長時間がんばるから偉い」という雰囲気は、たしかに感じない。〟

は傾聴に値します。最後に、

〝それでも、こういった類の、日本で広まっている『理想的なドイツの働き方』には、疑問を抱いてしまう。(ちょっとした宣伝だが、拙著『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』ではさらに詳しく書いているので、ぜひお手に取っていただきたい)〟


と結んでおられました。その本は、『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』 (新潮新書) 新潮社 価格 799円(2018/12/26時点) 発売日2018/08/08、です。

筆者の実感に極めて近い言説でして、風説に煽られないように、今年も「メディア・リテラシー」を磨きましょう。



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